シースヒータに円筒形の巻き加工を施し、お客様所有のチャンバーに設置するためのフランジを取り付けた製品です。円筒内で試料を加熱するために製作しました。不活性ガスまたは真空中で最高400℃の昇温が可能です。今回は⾧年にわたり弊社製品をお使いいただいている指定国立大学法人大阪大学 大学院のご担当者様にお話しを伺いました。
ヒータを必要としたきっかけは電気化学分野の研究でした。
中でも私たちが行っているのは基礎研究といって、製品開発を目的としたものではありません。ですが将来、二次電池や電気化学トランジスタ等の次世代のデバイスに応用される可能性のある機能の解明を目指しています。
ここで取り扱う研究テーマの一つに、電解液と電極の境界で起こる界面反応がありますが、この界面反応というのは温度によって異なる振る舞いをすることがわかっています。
そこで温度別に界面で起こる現象を正確に把握するための、電解液と電極を入れたセルを加熱する実験用にヒータが必要でした。
ヒータ性能として要求する温度は『常用100℃程度』と、そこまで高温領域ではありません。ただし実験の性質上必須となる条件が2つありました。それが『ムラなく均等に加熱できること』と『温度を緻密に制御できること』です。
これを満たすヒータは既製品にはなかったため、お付き合いのある大手の真空機器メーカー様へオーダーメイド製作の打診をしました。しかし残念なことに見積結果は予想外に高価格で、しかも大がかりな設備でした。だからといって、熱に関するノウハウを持たない私たちが装置を自前で用意するのも現実的ではありません。
検討の結果、オーダーメイドを得意とするメーカーに新しくパートナーとなっていただくことになりました。そこで私たちが提示する価格や仕様といった条件とマッチしたのがナガノだったのです。
希望通りの製品が納入されて満足しています。また操作性もとてもシンプルで助かっています。
このヒータを使用した実験についての学会発表は、国内外を合わせると10 件を超えています。類似の研究を見る限りでは、やはり加熱すること自体はポピュラーな手法のようです。しかし私たちのように、温度を細かく制御して界面の様子を観察している研究者は非常に稀です。もしかするとこのようなやり方は当研究室だけかもしれません。
この研究の実現にはヒータの性能が重要となるため、ナガノのヒータは研究の独自性を出すために大変役立っています。
すでに最初の納品から10 年近く経過していますが、当初から将来の研究にも応用することを見越して製作していただいているため、今後も使用を継続する予定です。
今回のケースのような実験機器をオーダーメイドで製作できるメーカーというのは年々減少しているように感じます。このような状況ではナガノのように柔軟な対応ができるメーカーは私たちのような研究者にとって貴重な存在ですので、今後もお付き合いをお願いしたいと思っています。